2001 A Space OdysseyDIGEST
2001TOPImg
 もし、この映画が一度で観客に理解されたら、われわれの意図は失敗したことになる。
アーサー・C・クラーク
 私はどんな記者にも、観客に対しても、自分の映画をやさしく噛み砕いて説明するつもりはない
スタンリー・キュービッリク
の映画は1968年に公開された作品で公開される前からなにかと話題の多い作品でした。
日曜日はもちろん平日にも行列ができほどの人気で一度や二度見てもストーリーがわからない映画としても有名でした。この映画を見た観客は二通りのタイプに分かれるといわれていて、一つはピートの客で画面を食い入るようにみ、今日こそは何とかモノにしてやる(~Q~;)というタイプ、もう一つは話題の映画だから話の種に見ておこうか、本来SF系映画にはあまり興味のない人で少し見て「こらあかんわと(。_゜)?zzz寝てしまうか帰ってしまう2通りのタイプ。私も一度ではまったく理解できませんでした(・'・;)。それから十数年かたったある日、古本屋で【アーサーCクラーク博士著2001年宇宙の旅】文庫を発見!「ぉおーこの本はあのわけのわからん映画の本じゃ〜わと購入\100円(^^;読んでるあいだ前に見た映画シーンの一つ一つが鮮明によみがえり「ここ(・'・;)このシーンじゃ〜おーそうだったのか!ぉおー(~Q~;)感動と発見の連続、あとで二度三度とビデオを見直し、そしてまた原作を読みなおし・・おーやっぱしそうだったかー(〜Q〜;)と数十年ぶりに映画鑑賞を完結したのでありました(笑)。普通映画の作成には先に原作がありそれを元に映画化するものですが、この作品はアーサーCクラーク博士著の1950年「前哨」という短編小説を元に、2001年宇宙の旅の小説と映画が同時進行で書かれたため、原作が映画を上映する前に目に触れることがなかったこと、製作中も(ストーリー)を伏せて作られ映画の構成も言葉に頼らないものだった為(極端にせりふが少ない)映画を見ただけではストーリーがわからないように、作られていたのです。リピート客も考慮に入れて作られていたのではないかと思われます。この作品の正しい見かたはまず映画をみてそれから小説を読み、またその一つ一つのシーンの確認のためビデオを見てまた原作を読むですね(^^;!。
今までに見た純粋なSF映画のなかで、未だかつてこの作品にまさるものを見たことがありません。この作品が封切られた頃まだアポロが月に行く前にだったことを考えて見ても、いかに素晴で科学的にも裏付けのあるすばらしい作品だったことがおわかりになると思います。欧米でも日本でも数十年ロングランを続けた劇場もあると聞きます、またローマ法王もこの映画をご覧になって絶賛されたそうです。
(^^;今年がその2001年なわけで、でこの映画にいくらか興味があっても本まで買って読むのもなんだなーって人に、十分の一程度のダイジェストにしました(^^;後半はまだ整理できてないまま載せていますのであしからず。
最後に倉田わたるの2001年宇宙の旅の真相もお読みになってみてください。

原初の夜 《絶滅への道》
 恐竜の時代はすでに終わっていた、いつの日かアフリカと呼ばれる大陸では生存競争のクライマックスを迎えていた。この乾燥した不毛の大地では小さくすばしこいものと、獰猛なもののみ栄えることが出来た。その中に50匹のヒトザルの群れがいた、ヒトザルの群れは本能の命ずるがまま滅び行く道をたどろうとしていた。その中に<月を見る者>がいたなかま達のあいだでは巨人と言えた、50フィート近い身長で毛深い筋肉質のの体質、頭部はサルよ人にずっと近く、サルの能力を超えたものが何かあった。<月を見る者>ほら穴からはい出すと巨大な岩によじ登り月を見た。<月を見る者>達の群れは新しい岩と対面した、空から明るさが消えるころ石板は輝きはじめた、ヒトザル達は輝く石板に魅了された、見えないなにかが彼らのこころを探り潜在力を計っているとは考えもしなかった。

ヒトの進化
い動物が地上を闊歩しはじめた、多くの強大な生物の滅亡を見たこの世界では、その運命は秤の上を微妙に揺れ動いている状態だった、透明な石板がアフリカにおりて10万年のちもヒトザルはなにも発明していなかった。しかし彼らは変貌をはじめている、ほかの動物にはない技術も持つようになった。骨の棍棒は長くなり彼らはいっそう強くなった。やがて世界は変わり始めた20万年の間隔をおいて4つの巨大な波となって、氷河期が襲い、生物をふるいわけていき彼らは生き残った、違う形に生まれ変わっていたのだ。道具そのものが道具を作った者を作り変えたのである。最初の真の人間は道具や武器の点では百万年前と大した進歩はしてなかった、だが何にもまして重要な道具話すことを覚えたのである。

TMA1 《特別飛行》
クラビウス基地1970年代の世界情勢は恒久的な危機といえた。産児制限は安価であり確実性もあり主要な宗教はすべてそれを奨励したがいつ減するのが遅すぎた。結果は世界的な食料難で、アメリカでさえ肉のない日が続くようになり、15年以内に大規模な飢餓が予想されるまでになっていた。百万年をえても人類は攻撃本能を失ってはいず、38の核保有国がお互いを虎視たんたんと監視しあっているのだった。地球を飛び立つたびにフロイト博士は自分が帰ってきたとき地球はそこにあるのだろうかと考えるのだった。
月面クラビウス基地
クラビウス基地は地球側の月面では2番めに大きなクレーターで南部高地の中央にあった。緊急事態のさいは基地は完全な自給自足となる、生命維持に必要なものをすべて付近の岩を砕いて熱し科学的な処理をすることで製造できる能力を備えてる。
磁気異常 フロイト博士は大統領の命を受け地球から特別飛行を終えてクラビウス基地に到着した、今回の異常をマイクルイズ博士から説明を受けた“ティコ磁気異常第一号TMA1”は中央クレーターを指差した、「1千マイル上空から撮影したものですが、この半径でどれだけの大きさか一目瞭然でしょう、過去一年にわたって私たちは低空衛星を使って行ってきました---これがその結果です」と地図を見せた、等高線地図に似ているが示しているのは磁気の強さであった。大規模な隊を編成し二週間にわたって掘り進んだ結果地価20フィートのところに一つの物体があった、「周囲の地質学的証拠からするとおそよ300万年前に埋められたものです、その頃はまだ人類は存在しなかったとすると、地球外知的生物の存在を立証する証拠になります」フロイト博士はどうしょうもない無力感を感じていた、地球の戸口にたったばかりの人類は永久にとけないかもしれない謎に直面したのだった。フロイトがそんな感概にひたっているときだった、突然ヘルメットのスピーカーが突き刺すような雑音を発した、それはすさまじい過重がかけられ歪められた時報の音を思わせる300万年を闇の中で過ごしてきたTMA1が月面の夜明けを迎えて発した喜びの声だった。
聞き入るものたち
火星の遥かかなた1000マイル、人間が誰一人到達したことのない虚無の中を深宇宙観測機79号がゆっくりと運行していた。その79号が奇妙な現象を観測していた、惑星間を渡っていく微弱なまぎれのないさざ波を観測していた。同じ現象は火星の周囲を1日2回まわる火星衛星15号〜21号そしてあと1000年は到達できないだ遠点をめざして冥王星の彼方の冷たい虚無のなかを進む5号でも月面から発されたエネルギーを観測していた。

惑星と惑星のあいだで ディスカバリー号
地球を離れて30日デイビット・ボーマンはディスカバリー号の2つの閉ざされた小世界以外の場所に住んでいたとは信じられなくなることがたまにあった。今回の計画まで訓練に費やされた年月、月や火星への飛行、それらが他人の人生の中のでき事のように思えるのだった。それは5年前の『木星計画』の名のものにはじまった太陽系最大の惑星への有人宇宙船による最初の往復飛行計画が変更されたのだ。木星に向かうには向かうのだが通り過ごす、速度をゆるめもしないどころか巨大惑星の重力を利用してさらに加速し土星に向かってまっしぐらに飛ぶ、そして二度と戻ってこない片旅行である。だが乗組員は自殺を意図しているわけではない、人口冬眠の夢のない眠りのなかでディスカバリー2号が助けにやってくるのを待つのだ、万事順調に運べば7年後に地球に戻ってくる。ディスカバリー号は最終目的地の土星めぐるパーキング軌道に入り巨大惑星の新しい月となる。彼らは少なくとも100日にわたって観測し研究するのだ、そして100日の終わりにディスカバリー号は活動を停止する、全員が人口冬眠に入り必要不可欠な装置だけが人口頭脳に見守られて活動を続ける。船はそのまま土星の周囲をまわる。正確に決定された起動なので一千年後でも船を探し出すことはたやすのだ。
ハル:目ハ ル
船の6番めの乗組員は人間ではなかった高度に進歩したHAL9000型コンピューターがそれであった、HALといっても発見能力をプログラムされた(アルゴリズミック・コンピューター)第3次コンピューター革命の生み出した傑作であっる。1980年代に入って任意の学習プログラムに従って神経回路を自動的に発生させる---自己複製させる人工頭脳を人間の頭脳の発達に酷似したプロセスで成長させることが可能になったのである。それは人間の理解を100万倍も越し人脳よりはるかに優れた能力を持つことが出来た。
船内生活
ボーマンディスカバリー号全長は400フィート近くあるが乗組員の為にしつらえられた小宇宙は、直径40フィートの機密部分だけ。そこにすべての生命維持装置と、船の機能的心臓部であるコントロールデッキがあるのだ。機密球体で赤道部分は、直径35フィートゆっくりと回転する鼓輪を内包している。このメリーゴーランド、つまり遠心分離機は、10秒に一回の割合で回転し、月面のそれに等しい人口重力を作り出す。そのメリーゴーランドのなかには、キッチン、食事、洗濯、トイットの施設すべてが備えられていた。  
小惑星を帯を抜けて
この先は、人間の存在を許さない世界、100万個以上の小惑星の軌道が網の目のように交差する空域なのだ。どんな小さな岩塊であっても宇宙船は木っ端微塵になる。だがそれは現実に起こる可能性は取るの足らないものものだった一片100万マイルに1個の小惑星があるにすぎないのだ。第86日は、彼らが既知の小惑星にたった一度、最も接近する日だった。直径50ヤードの岩塊で19997年月面天文台がその存在を感知していた。ハルがつかさず出会いが近づいたことを報告した、ポーマンはハルに望遠ディスプレイの切り替えを命じた。小惑星らしいものはどこにも見当たらず、倍率を最高にあげても、大きさのない光の点があるだけだった。6時間後には先刻の数百倍も明るくなっていた、もはやそれは光の点ではなくなり、ハッキリとした円盤の形を見せはじめていた。2人は、長い航海の途中にある船員が、立ち寄ることもなくかすめた陸地をいとおしむような気持ちで、通り過ぎる空の小石を眺めた。

木星面通過
望遠鏡で見る木星は素晴らしい景観である、まだらの極彩色の球はほとんどの空をおおいつくす、その真木星の大きさを把握するのは不可能だ。あるときボードマンがハルの記憶装置に備えられているテープで勉強しているときだった惑星の驚くべき大きさを思い知る出来事が起こった。地球の全面積をはがし、獣皮のように惑星に貼り付けたイラストレーションを見つけたのだ、地球儀上の大陸と海すべてを合わせてもインドほどの大きさもないのである。時速1万マイルの現在のスピードでもディスカバリー号が木星の全衛星の軌道を横切るのには2週間あまりもかかるのだ。木星は小惑星から一時的に月を捕らえては数百万年後に手放し、それを絶えず繰り返している、最後に勝を占めるのは常に太陽である。今その圧倒的な重力場の中に新しい獲物が入り込んできた、ディスカバリー号は木星の重力場からはねかえりその衝撃でさらに運動量を得ていた燃料を消費することなく、速度を数千マイルにあげたのだ、といって力学の法則をおかした訳ではない、ディスカバリー号が得た運動量を木星が失ったのだ。

深 淵

バースデーバーディー
7千マイル距離を光の速度で渡ってきたハッピーバースディの歌声が、「気おつけてねダーリン」プルー婦人の涙声が割って入っていた「神様のお恵みがありますように」ビジョンス・クリーンはうつろになった。「お祝いの邪魔をして申し訳ないが」とハルがいった。「問題が起こった」「なんだ?」ポーマンとプルーが同時にたずねた『地球との接触を保つのが難しくなっている、A4Eユニットがおかしい。72時間以内に駄目になる」「正確な故障箇所がわからないか」?「と切れ途切れなので、まだ突き止めてないがA4Eユニットのようだ」「どんな処置をしたらいいと思う」「取り替えることだ、そうすれば検査ができる」ポーマンはすこしの間設計図を見ていたが「これは船外の仕事じゃないか、こっちの受け持ちだな景色が変わるだけの事だ、管制官にうかがいをたててみよう」とボーマン考えを整理しながら、座っていたがやがて伝言を口にし始めた「管制官こちらX線デルタ1・・・・・・・・・」返事はハルとゲームをしているときはいってきた「X線デルタ1こちら管制室・そちらの2103確認したテレメーターの情報をシュミレーションで調べている、以下アドバイスする。」----「故障箇所に適応するテスト作業を検討中」
遠 出
スペースポッドは直径9フィートの球体で、推進の加速は月面上空に浮かぶくらいの力で窓のすぐ下には関節を持った2対の脚が突き出している。プールはスペースポットに乗り込むと注意深く制御装置・・小型計器パネルの最終チェックをした「外ドアを開けよ・ポッド離船はじめ」ジェットを半秒噴射させるとどれ自身の軌道をゆく独立した天体となった。長距離用のアンテナにたどりつくと、細心の注意で状況の観察をした。プールは背後から接近した、ポッドはスポットライトをつけディスカバリーの影を消すとようやく目的の装置が目に入った、AE35ユニットは4っつのナットでとめられた金属版の中にある、面倒な仕事でもなさそうだがポットの中からでは無理な作業だ。ポッドをアンテナから2フィート離して止め宇宙服に異常がないことを確かめ、ポッドの空気を排出した。ディスカバリーの外壁の手がかりをつかむと、袋から予備のAE35ユニットを取り出した。「これから装置をはずす、アンテナシステムのパワーを切ってくれ」「パワーを切った」ハルが答えた「ようし今装置を引っ張り出している」板は簡単にスロットから抜けた一分足らずで予備がその部分に収まった。パワーが回復するとき、アンテナが異常な回転をする場合を考えてゆっくりと離れた。「コントロールパワーを戻してくれ」ハル「パワーを入れた」
診 断2人はメリーゴーランドの小さな作業場兼実験室に立っていた、AE35ユニット200%の過負荷をかけても故障予報は出ない、完全にテストをパスした。「ハルの故障予備装置が故障したってこは考えられるな」「危険はおかせない、このAE35ユニットはNGとして廃物庫の中に捨てよう、悩み事は帰ったあとでほかの連中に押し付ければいい」だが悩み事は地球からの次の送信ではじまった。「Xデルタ1・こちら管制室、2155号送信について、アルファーエコー35ユニット故障がないという報告はこちらの検査とも一致した、こちらのコンピューターを2台使ってさらにテストををおこなう結果が出たらすぐに知らせる・・・・・・・・」そのときの当直はフランク・プールだった、ハルから話はないのかと黙って待っていたがハルからの話はなかった。ポールマンはもう起きていてコピーを注いでいた。プールは不安を隠しきれない声でプールにおはようと言った、どうだい・・・「うん・・・」プールはゆっくり答えた「管制室からちょっとした爆弾宣言がでたよ、今のままでも危険はないが地球管制室に臨時に切り替える案を検討中だそうだ、プログラム分析のためにね」ハルがこの会話を聞いている一言あまさず聞いていることを2人はしっていた。
絶たれた回線
このごろではハルが予定にない発言をするとき、あらかじめわかるようになっていた。この数週間にいつのまにか彼についた癖で電子的咳払いがはいるのである、「ああ・・・・デーブ、君に報告することがある」「なんだ?」「AE35ユニットがまたおかしい」「わからんな、ハル2日で2つとも装置が駄目になってしまうことがあるかい」「不思議に思うかもしれないが、もうじき故障を起こすのは確かだ、デーブ」「故障の原因はなにだ」ハルはめずらしく長い間をおいて答えた「はっきりとはわからないな、デーブ前にいったとおりで、異常の正確な位置がつかめない」「とにかく管制室に報告してアドバイスを聞こう」と彼は問いをおいた、だが返事はなかった。地球からの連絡は通話回線とテレタイプによる通信で充分なのに、わざわざラジオ周波数帯で画像を送ってきたのは異例のことだった。プルーとボーマンは問題のこじれてきたことに気がついた「AE35ユニットの分析が終わった、故障はAE35ユニットにあるのではない・・解決策はそちらの9000を切り離して、地球管制方式に切り替える・・の交信中・突然管制官の声が消えたと同時に警報が鳴り響いた・非常事態!非常事態!「どうした?」ハル「予報したとおりAE35ユニットが故障した」「照準ディスプレイを見せてくれ」十字線から地球が外れはじめていた。「ちくしょうめ」ボーマンがいった。「ハルは正しかったわけだな」「あやまったほうがいい」「その必要はないよ」ハルが割り込んできた。「故障を喜んでいるわけではないが、私に対する信頼が戻ってくれればうれしい」「誤解して悪かった」ボーマンがいった。「それはそれとしてアンテナの手動コントロールをこちらに回してくれないか」「いま切り替えた」大変な努力は払ってアンテナを十字の方向地球に収めるのに成功した。
土星一番乗り
土星
作業はその前にやったことの繰り返しだった・・しかしフランクは何一つおろそかにしなかった彼は再びベティーをアンテナ支柱の基部から20フィートばかりのところに止め、ポットのコントロールはハルに切り換えてドアをあけた。「これから外に出る」彼はボーマンに報告した「すべて異常なし」コントロールデッキのボーマンにlうなり声とあえぎが聞こえてきた。「ナットの一つが動かない強く締めすぎたらしい--フィーやっとはずれた」「ハル-------ポットのライトを20度右に回してくれ・・・ありがとう・・・それでいい・・・」何かおかしい意識のはるかな奥で、かすかに警告が鳴り響いた、数秒間考えをめぐらした後、彼はやっと原因が思いあたった、ハルは命令を実行したが今までと違って、了解の合図を送らなかったのだ。アンテナの台座にいたプールは、作業に忙しく異常に気がつかなかった、動くはずのないところで何かが動いた!、驚いて目をあげた。スペースポットのスポットライトがいま彼の周囲で動きはじめているのだった。繋ぎとめるときへまをしたのかもしれない。だが次に来た驚きは、恐怖の入り込む余地のないほど大きなものだった、スペースポットが最大推進力でプールを押しつぶしプールの命綱を引っ掛けたまま星の世界に全速力で加速しながら飛び去っていった。ボードマン彼は叫んだ「ハルどうしたんだ?ベティーの逆噴射を最大のしろ!逆噴射だ!」かれは叫んだ「フランク・・フランク聞こえるか・・聞こえたら手を振ってくれ」その時だった彼のの声に答えるようにプールが手を振った、つかの間ポーマンは首筋の毛がが逆立つのを感じた、突然唇が乾いた、生きているはずの無いプールが手を振ったのだ。五分後ポッドとその連れは星の中に消えていた、ボーマンは長い間空虚に目をこらし、一つの考えだけが鳴り響いていた・・フランクプールは土星に一番乗りする人間になるだろう・・・。
ハルとの対話
ディスカバリー号のシステムはすべて正常に機能していた。コントロールデッキからいつ遠心機にやってきたのかおぼえがない。気がついたときはキッチンのいすに座っていた、睡眠薬の永い眠りからさめたように、彼はゆっくり周囲を意識しはじめた。正面には魚眼レンズがあった、それはハル視覚入力装置で、船内の重要な場所には必ず配置されている。ボーマンははじめてそれを見るように見つめた。そしてゆっくりと立ち上がるとレンズに近づいた。突然ハルが離しかけた「困るんだろフランクがああなってしまったんでは?」「うん」長い間をおいてボーマンは答えた」この事件できみはかなりだげきを受けているね?」「何を聞きたいんだ?」この言葉を処理するのにハルは長い時間をかけた。・・・かれは優秀な乗員だった。ポッドのコントロール装置が故障して起こったのか?それともハルの故障(ミス)なのかハルに尋ねるきにはなれなかった。今でもフランクは故意に殺されたという考えを納得できないでいた。乗務員に一人が死んだときは生き残ったものは直ちに冬眠の一人を目覚めさせ補充しなければならない。冬眠カプセルをハルの管理下から引き離し独立した装置として冬眠装置を操作することも出来るのだ、今の状況にあってはそちらのほうが好ましい感じだった。「ハル」出きる限り平静な声で彼はいった。「手動コントロールをこっちにくれ・・・・全部だ!」全部だって「ボブ」「そうだ」補充は1人だということを忘れたのかい?」「非常事態が発生したんだ手助けはいくらでも欲しい、自分でやりたいんだ手動コントロールを渡してくれ」「デーブ」君には仕事が沢山あるじゃないか私に任してくれ」「ハル・・・・「手動冬眠に切り換えろ」「オー・ケーデーブ」とハルはいった。やがてボーマンの耳に聞きとれないほどの遠いモーターの音が聞こえてきた。
冬眠
知る必要
今までハルは絶対的な誠実さでその力と技能のすべてをたった1つの目的に投入してきた、故意の誤謬など考えられない。真実の隠蔽すら彼の心を不完全な誤りの意識でいっぱいにするものだった。人間でいえば罪悪感とでもいうのだろいうか。なぜなら彼もまたかれを創造した者たちと同様純真無垢の状態で生まれてきたからだ。彼はプールやボーマンに教えることの出来ない秘密について考えつづけていた。3人の冬眠者には冬眠に入る前に知らされていた、プールやボーマンは飛行のはじめの数週間、世界のテレビにひkkりなしに出演させられていたので、知る必要が起きるまで教えないほうがよいという策がとられていた。ハルにとっては自分の統合された意識をしだいに破壊していく抗争に気がついているだけだった。彼は間違いを犯すようになった、そして神経患者が自分自身の症状を客観的にみることが出来ないように、それを否定した。多くの人間が神経症の処理を自分でしているように、自分で何らかの処理をしていたかもしれない・・自分の存在を脅かす危機に直面しなかったら・・・・・・・ハルは接続を切ると、ボーマンに脅迫されたのである。ハルにとっては死に相当することだ、かれは自分の武器を総動員して自己防衛しようとした。誰にもじゃまされることなく任務を続行するつもりでいた・・たった一人で。
真空
ボーマンは近ずく竜巻のそれに似た轟音と風が体お引っ張り始めるのを感じた。空気が船から宇宙空間の真空へ噴出しているのだ。気圧が0に下がり意識を失うまであと10秒か15秒、考える余裕はなかった、だがそこで突然設計者の1人がかれにいったことを思い出した・・・事故を防ぐシステムはできるが、故意の事故を防ぐシステムまでは無理だ!。非常退避室の黄色い標識が見えた、よろめきながら近づき転がり込んだ、その小部屋は人1人と宇宙服が1着入るだけの大きさだった。その部屋には小型の酸素ボンベが備えてあった、ボーマンは最後の力をふりしぼって手元に引いた酸素が肺にに流れ込んできた、しばらく彼はあえぎながら立ちつくしていた。酸素の噴射が終わると突然静かさが戻ってきた、船内の大気はすべて宇宙に吐き出され船内は真空になったのだ。このまま宇宙服を着なくても一時間は生きていられるが無駄に酸素を浪費してしまうだけだ、宇宙服に入り外に出た。彼は事実を見定めるために冬眠カプセルに向かった、はじめにホワイトヘッドを調べた・次いで・カミンスキー、ハンターも・・・1目見るだけで充分だった。地球との通信も途絶えた宇宙船の中で彼は1人残されたのだ。ぐずぐずはしていられない打つ手は決まっている、やがて彼は楕円形のドアにたどり着いていた、その表面にはこんな表示が言葉が書かれていた「許可なき者は立ち入りを禁ず」「H19種許可書をお持ちですか」カギは無かったが、3枚の封印がドアを止めていた。ボーマンは前に1度だけ入ったことがある、まだ備えつけ工事が始まってまのない頃だった。無数のソリッドステート論理ユニットが上下に左右にずらりと並べられたその部屋は銀行の地下金庫室にどこか似たところがあった。ハルの目が彼の存在に反応したことはすぐにわかった、船内の送信機にスイッチがはいった・・やがて聞きなれた声が聞こえてきた「ハローデーブ」「生命維持装置に何か起こったようだね、デーブ」彼は気にとめなかった論理ユニットに注意深く目を通していた、これは、かなりきわどい手術になりそうだ、ハルの動力源を切るだけの話ではない、たとえそれが出来たとしても結果は破滅だろ、彼の管理がなければこ船は金属の屍となってしまう。この病んだ、だが才気溢れる頭脳の高等中枢だけを切断し純粋に自動的な管理システムだけはさせておく、それが唯一の解答だ。はじめるぞー彼は心のなかで言った。認識フィードバックとあるラベルのある区画を固定している棒をはずすと、彼は最初の記憶版を抜き取った。「おいデーブ」とハルが言った「何をしているんだ?」苦痛を感じるんだろうか?とボーマンの頭に浮かんだ。自我補強のラベルのある小ユニットを抜きとりはじめた、やがて部屋の中は中を行き交うユニットだらけになった。何重にも重複構造のおかげでコンピューターはまだ自我を保っている。今度は自動思考パネルにとりかかった。「デーブ」とハル「君はなぜ私にこんな事をするのかわからない、君は私の心を破壊しているのだ、子どもみたいになってしまう・・・存在しなくなってしまう・・・・」「わたしはHAL9000型コンピューター製造番号3号・・・わたしはイリノイ”・・3の逆数は0.33333333333333333333333333333333・・・・・・・・・・2*2わたしの最初の先生はチャンドラ博士$&”!デイジーデイジー・・彼は最後のユニットを引き抜いた、そしてハルは永遠に沈黙した。

秘密
フロイト博士はほとんど睡眠を取っていないように見えた。太陽系のはるかな端にいる孤独な男に、自信をうえつけようと彼は最善の努力を傾けていた。「HAL9000の故障の原因は我々のほうでもおよその見当がついている、それももう今となっては、緊急の問題ではないので説明はあとに回す、ここでこの任務本当の目的を話しておかなければならない」「2年前、我々は地球外知的生物の最初の証拠を発見した」TMA1とその周囲に群がる宇宙服を着た人々の写真がうつった、大変な事件だ・・・・だがそれと俺がどう関係あるのか?「物体のもっとも驚くべき特徴は、その古さだ地質学的に300万年前の物であることを立証した。その石板が月の夜が明けるとまもなく、太陽系中に非常に強力な電波エネルギーを放出した、それと同じ頃宇宙探査機の何台かがその異常な電波を検出、飛跡を辿ることが出来た、するとその方向にピッタリに土星があった。さまざまな事実を組み合せてみるとモノリスは太陽を引き金としたある種の信号機ではないかという結論がでた。300万年も進んだ生物の動機を何十もの理論で検討してみた結果、モノリスはある種の警報装置だろう、我々はその引き金を引いてしまった・・・、それを備えつけた生物が今も存在するかどうかわからない、したがって、君の任務は発見以上のものとなる、カミンスキー以下3人のチームはその任務の為特別な訓練を受けていた。しかし君は1人でそれを成し遂げなければならない、最後に君に目標を教える、土星面に進化した生物が存在するとは考えられない、今のところは目標を第八惑星・・・ヤスペタにしぼる。ヤスペタは太陽系の中でもユニークな天体だ直径800マイル月面望遠鏡でもやっと円盤がわかるくらい小さい、だがきわめて明るい、奇妙に対称的な斑点がその片面に見られそれがTMA1となんらかの関係をもっていると考えられる。これで君は本当の目的をしったわけだ。土星の衛星で君が出会うのは善なのか悪なのか・・・・それとも、トロヤの専売も古い廃墟なのか、それすらわかってないのだ。」

 土星衛星群

 
ETについて
TMA1と土星系との繋がりに疑いを持つものはいない。だがモノリスを建造した生物がそこに発生したと信じる学者もまたいなかった。生命が存在する場所としては、土星は木星よりさらに条件が悪い。とすれば、はるかな昔地球を訪れた生物は、地球外ばかりか太陽系以外のものかもしれない。多くの科学者は、にべもなくその可能性を否定した。これまでに設計されたディスカバリー号でもアルファーケンタウリまで到達するのに二万年銀河系内でちょっとした距離を進もうとすれば数百万年はかかる。もし将来、推進システムが改良されたとしても、やがては越えることのできない光の壁にぶつかるだろう。どっちにせよ、知的生物がすべて人と同じように短命だと考えるのはおかしい。千年の旅でもちょっと退屈する程度という生物だって存在するかもしれない。「高速は本当に越えられない壁なのか?」なるほど、特殊相対性理論、もうじき百周年がめぐってくるぐらい耐久力を示したが、だが、そろそろ三つの割れ目が現れてきている。アインシュタインを否定することはできなくても、彼をさけて通れるかもしれない「地球外の知的生物はどんな形態をしているのだろうか?」二つの対立するグループによる一方は、類人生物に違いないと主張し、他方は、人間と似ても似つかぬ生物と信じて疑わないのだ。前者の論点は二足二手主要な感覚器官が身体の最高部についていることが、必然的かつ理にかなったもので、これ以上優れたデザインを考えるのは容易でないといい。別の生物学グループは、人体は永劫の年月に偶然が作り上げた何百万もの進化の選択結果であり、と彼らは指摘した。これとは別のもっと異様な考えかたをする者がいたことをボーマンは思い出した。真に進化した生物が肉体組織を持つとは、彼らは信じていなかった。科学が進歩するにつれ、やがて生物は肉体という棲かから逃れ出る、病気や事故からたえずつきまとわれ、死えとみちびく肉体などないほうがよいのだ。かれらは金属やプラスチックの製品に取替え不死性をかちとるのだ。脳髄は有機組織の最後の残存物としてしばらくとどまり、機械の四肢に命令を送るのだ。最後には脳髄さえ消えてゆくのだ。意識の着床する場所として電子知性になる。知性と機械との対立はやがて完全な永遠の妥協で終るだろう・・・・しかしそれが究極だろうか?そしてその先にまだ何かがあるとすれば、それは神以外にあるまい。
ヤスペタの眼
ボーマンがはじめてヤスペタを観測したとき、例の奇妙な楕円形の輝く斑点は、土星反射光に照らされているだけで、半分は影にかくれていた、それは七十九日周期の軌道をゆっくり運行しながら、直射日光のなかに現れ出ていた。宇宙船がわずか五万マイルに近づき、ヤスペタが地球から見る月の二倍ほどの大きさになった。ディスカバリー号の主推進器が、最後のエネルギーの放出をはじめた。優秀なエンジンは何の誤りもなくその義務を成し遂げた、それは宇宙船を地球から木星へそして土星へとはこんできた。しかしそれが動作されるのは今回が最後なのだ。ディスカバリー号は惑星開発のあけぼの時代の記念塚として永遠に軌道を巡り続けるのだ。距離は千マイルから百マイル台に縮まった主推進器が噴射をとめるとバーニア【微調整するための小さなロケットエンジン】だけがディスカバリー号をそっと軌道に移すために活動する段階に入った。ヤスペタ、はほとんど静止した状態のまま、ゆっくりと近づいてきた。忠実なバーニアは最後のエネルギーを放出し、永久に活動を停止した。ディスカバリー号は、衛星の衛星になったのである。

ビックブラザー
この星の表面には、二種類の物質しかないらしい。黒いほうは焼け焦げたみたいで、木炭によく似ている。白い区域については、まださっぱりわからない。境界ははっきりわかれていて、地表のディテールは何も見えない、液体ということも考えられる。何か重いガスかもしれない。三週目、また白い部分の上空にでた、だんだん内部に向かっている、なにかが見えてきた、望遠鏡で覗いてみる、例のものはビルディングに似ている・・・完全な黒色だ・・・表面はよく見えない、窓もなく、何の特色もない。ただ大きい垂直な石の坂だ。少なくとも高さ一マイルはあるだろう。「そうだ!月で見つかったものとそっくりだ!これは、TMA1のでっかい兄貴なんだ!。


実 験
三百万年間、土星の周囲を回りながら、運命の瞬間を待ち続けてきた。その建設のさい、一個の月が破壊されたその破片は今なお軌道を回っている。今、その待ち時間を終ろうとしていた。また一つの世界で知性が生まれ衛星のゆりかごから逃れようとしている。しかし彼らもまた血と肉からなる生き物であり宇宙の深淵を見上げるとき、彼らもやはり畏怖と驚異と孤独を感じるのだ彼らはさまざまな形態の生物と出会い、幾千もの世界で進化の働きを観察した。宇宙の夜のなかで、知性の最初のかすかな光がひらめき、消えていくのをいくたびに眼にしたことだろう。そして銀河系中で、精神以上に貴重なものを何処にも見出すことができなかったかれらは、いたるところでそのあけぼのを促進する事業をはじめた。彼らは星ぼしの畑の農夫となった、種をまき時には収穫を得た。そして時には、何の憐れみもなく除草しなければならないこともあった。調査船が一千年の旅を経てこの太陽の地を訪れたときには、巨大な恐竜はとうに滅びていた。それは凍りついた外惑星を通過し死にかけていた火星の砂漠の上空にひとときとどまり、やがて地球をみおろした。探検者たちが見出したのは、生命に満ちあふれた世界だった。彼らは何年もかかって研究し、分類した。知りたいことをすべて知ると、彼らは修正を加えはじめた。地上や大洋の多くの種の運命に干渉した、しかしそれらの事件のどれかが成功するかは、あとすくなくとも百万年待たなくては知ることはできないのだった。地球では氷河期が来たり、去っていった、氷河よりなおゆるやかなリズムで、銀河の文明の潮も満ち干をくりかえしていた。異様な、美しい、恐ろしい帝国が興っては滅び、知識を後に続くものに伝えた。そしていま星星の世界では、進化が新しいゴールを目指して進んでいた。地球を最初に訪れた探検者たちは、はるかな昔に血と肉の限界を感じはじめていた、機械が肉体を凌駕するとき、それは変化のときでもあった。はじめは頭脳を、次には思考そのものを、彼らは金属とプラスチックスの光り輝く棲みかに移しかえた。しかし機械生命の時代は急速に終った。彼らは空間構造そのものに知識を蓄え、凍りついた光の格子のなかに永遠に思考を存する方法を学んだ。やがて彼らは純粋エネルギーの生物に変貌した。今や彼らは銀河星の支配者であり、時すら超越していた。思うままに星ぼしのあいだを飛び、空間の割れ目のなかに沈みこむことができた。しかし神の様な力を得た現在でも、彼らは自分たちの出生地、消えさった海の軟泥をすっかり忘れてしまったわけではなかった。そしてなお、先祖たちが遠い昔に着手した実験の成果を見守っているのだった。


前 哨
船内の空気はすっかり濁ってしまって、このところずっと頭痛に悩まされている。あの事故以来浄化装置がうまく動いていない。今の軌道が傾斜しているので、TMA2からだんだん遠のいてしまう。まだ磁場が見つからない、今でも見えるのは二、三分のあいだだけで、そのうちに地平線に沈んでしまう、まともな観測ができなのでいらいらしてくる。スペースポッドには、着陸して帰船できるだけのデルダVはたっぷりある。EVAをして、物体を近くで観測したい。安全なようならてっぺんに着陸してみる。星の門(スターゲイト)は悠久の昔から太陽の方向に向けて異常の感覚をはたらかせていた。宇宙船は軌道に入り、奇妙な斑点を持ったつきの上空を低く回りはじめた。宇宙船は電波を放って話しかけた、一から十一までの素数を教え、もっと複雑な紫外線、赤外線、X線、星の門は応答しなかった、いうべきことは何もなかったからだ。長い間があり、何かが軌道を行く宇宙船から降下してくるのに気が付いた、それには記憶を探り、遠い昔に与えられた命令に従って、理論回路が決断を下した。土星の冷たい光のなかで、星の門は眠っていた力を呼びさました。


眼のなかへ
太陽も今では、それと見てわからないほど小さな星と化していた。星にしては明るすぎるが、直接その小さな円盤を見つめても、べつに苦にならなかった。熱はまったく送ってこない距離にあった。今の彼は、この何ヶ月か住み慣れた金属の家を、おそらく永遠に、離れようとしていた。もし帰ったとしたら、数ヶ月は生き延びながら正気をたもっていられるだろう、だが、それだけだ、冬眠システムにはそれをモニターするコンピューターがなくては役に立たない、四、五年後に救援が来るまでおそらく彼は生きていないだろう。fディスカバリー号は、今のところまだ、黒い空をまばゆい輝く星となって見えていた。降下のあいだは速度が上がっていたが、まもなく減速ジェットがはたらいた。黒い石板が、星ぼしを隠して地平線上に現れた。彼はポッドの向きを変え、最大噴射で減速した。そしてヤスペタの地表へと降下した。地球上でもこれほど単一な建物は少ない。正確に計測した写真で、それがおよそ二千フィート高さであることがわかった。その・・・なんと呼ぼう・・・その屋上の上には、岩一つ見えない、入り口らしきものも見えない。「・・おかしいなー・・・」ボーマンの声はとどまったようにとぎれた。恐怖をおぼえたのではなかった、文字通り説明できないだけだった。長さ800フィート幅200フィートの巨大な長方形の上にいた、ところが、それが、彼から遠のいていくように見えてくる、三次元の物体が見方を変えると、近い面と遠い面がいれかわって表面側が裏のように見えてくる、そんな目の錯覚とそっくりだった。それは平原からそそり立ったモノリスではなかった。屋上と思えたものは無限の深みに沈んでいた。その大きさはどこまでいっても小さくならなかったのだ・・・・。
ボーマンは、切れぎれの言葉をようやく言い終る余裕しかなかった。しかしそれは、九億マイル彼方、八十分未来で待ち構えている、管制官室の男たちにとっては生涯忘れることのできない一言になった。「なかは空っぽだ---どこまでも続いている---そして----信じられない---星がいっぱい見える!」


退 場
星の門は開いた。そして閉じた。
はかり知れぬほど短い一瞬、空間はねじれ、反転した。そしてヤスペタは、この三百万年間、常にそうであったように、ふたたび孤独になった---だが上空で主人をなくした、宇宙船が、その建造者たちにむかって、彼らが信じることも、理解することもできないメッセージを送り出しているほかは。


星の門のかなた
グランドセントラル
銀河
いている感覚は無かった。だが彼は衛星の奥深く輝く、信じられない星の海に向かって落下していた。ヤスペタのモノリスは空洞だったのかもしれない、屋上と見えたのは錯覚かもしれないし、あるいは何かの膜で、彼を通すために開いたのかもしれない(だが、どこへ連れて行くために?)五感を信じるとすれば、巨大な長方形のシャフトのなかを数千フィートの底へ向かって垂直に落下していった。はじめはゆっくりだったので、星が四角い枠の外に消えてゆくのに、なかなか気が付かなかった。だがしばらくすると、星の膨張がはっきりわかるようになった。まるでこっちに向かって想像を絶する速さで近づいてくるようだった。しかも星がなくなる様子はいっこうに無く、中心から無尽蔵に流れ出てくる。もしかしたら、じっさい彼は動いていず、空間が動いているのかもしれない・・・空間だけではないことに、彼は突然気がついた。ポッドの小さな計器パネルの上にある時計も、奇妙な動きかたをしていた。普通なら十分の一秒台の数字は目まぐるしく動いて目にも止まらないはずなのに、それが今でははっきり区別がつく間をおいて、動いていて読むことが出来るのだ。秒の桁は、時が停止するかと思えるようにゆっくりと動いていた。壁が動く速さは、0から高速の百万倍までどのあたりでのいいような気がした。なぜだか彼は少しも驚いていなかった、心配もしていなかった。前方の長方形が明るくなった、ポッドはトンネルから出かかっていた、突然正常な遠近の法則に従いはじめた。ヤスペタの中心まで下がり、反対側から出てきたのではないかと、つかのま思ったほどだ。しかしここがヤスペタとも、人間が知っている世界のどことも違っていることに気が付いていた。大気はない、信じられぬほど遠い、平坦な地平線の果てまで、あらゆるディーテルが、すみもせずみわたせることから、解った。ボーマンは、以前誰かから聞いた、南極の「ホワイトアウト」話を思い出した。同じ言葉はこの奇妙な世界でも通用する、ただ理由はまったく違う、気象学の理論で説明つくものではない。外部は完全な真空なのだから。やがてボーマンはべつのディーテルが目に入った、空一面に小さな無数の黒い点が動きもせず、無秩序に並んでいるのだ。白い空に見えるあの黒い点は、星なのだ。彼は銀河系のネガフィルムを見ているのかもしれなかった。宇宙全体が裏返しにされたという感じだった。彼は急に寒気を感じた、そして全身が、どうしょうないほど震えはじめた。そのとき、彼はふと気がついた、平原をおよそ二十マイル行ったあたりに、円筒形と見分けがつく金属の塊があるそれは巨大な宇宙船の残骸としか考えられなかった。この荒寥としたチエッカー盤にあの宇宙船が打ち捨てられたのは、何年昔のことだろう。そしてあれに乗って星の海を航海していたのは、どんな生物なのだろうか?・・・彼はすぐ残骸のことを忘れてしまった。何かが宇宙船上をこっちに、近づいてくるのに気が付いたからだ。はじめそれは円盤のように見えた、通り過ぎるころ、その長さは数百フィートの釣鐘形であることがわかった。その宇宙船は、地表にある何万もの巨大なスロットの、一つに向かって降下していくところだった。数秒後金色の船体を一瞬輝かせて惑星の深奥に消えた。その時、自分もまた、巨大世界のまだらの地表に向かって、ゆっくりと降下しているのに気が付いた。さっきのとは別の長方形の深淵がすぐ下にぽっかりと口を開けていた。それが太陽系の入り口でないことは、今では確信があった。その瞬間信じられない洞察が閃き、彼はシャフトの正体をつかんでいた。これは創造を絶する、時間と空間の次元を通じて、星間の交通をさばく宇宙転送装置に違いない。今彼通っているのは、銀河系のグランド・セントラル・ターミナルなのだ。

見知らぬ空
ちっぽけなスペースポッドは百千の星の輝く宇宙空間に踊り出ていた、みなれた宇宙空間に戻っていたのだ。今しがたとびだしたトンネルの方向に目をやった彼は、あらたなショックに襲われた。そこには無数の多面体で分割された世界にも、ヤスペタの複製もなかった。何もない---強いて言えば、星ぼしを背景にして見える、墨を流したような虚空だけ。見守るうちに、ドアは閉じた。宇宙の裂け目が修繕していくよ宇宙?うに、その部分にゆっくり星が満ちていった。そして彼は、見知らぬ空の下でたった1人とりのこされていた。スペースポットはゆっくり回転していた。それにつれ、新たな驚きが視野に入ってきた。前方で、星のひとつがみるみる明るさを増しし、背景から浮き上がりはじめていた。おれは思いがけぬ速さで迫ってきた。それが星ではないのに彼は気が付いた。さしわたし何百マイルにも及ぶ、鈍く光る金属の網という格好なのだ。大陸ぐらいあるその面積のあるその表面に点々と年ほどの大きさの建造物が見える、どうやら機械らしい。それらの周囲には、何百ものもっと小さな物体がきちんと縦横上下に並べられていた。そんな集積をいくつか通り過ぎていたのち、ボーマンはそれが宇宙船の隊列であることに気がついた。彼は、広大な軌道上パーキング、センターのそばと飛んでいるのだった。サイズはハッキリしない、だがむやみと大きいのはたしかだ。デザインも、球、多面体、ペンシル型とさまざまだった。ここは、星間交易の中心の地なのだ。いや、であったと言うべきかもしれない---活動はどこにも見られなかった。この広大な宇宙は、月と同様に死んだ世界だった。何万年かの差で、ここを建設したもの達とすれ違ってしまったのだ。はっきりと予想していたわけではなかったが、他星の知的生物とは思っていた、しかし遅すぎたようだった。はるか昔、何らかの目的で作られた装置、その製作者たちが滅び去った後、働き続けている自動装置に捕らえられてしまったのだ。そのうち廃墟された宇宙港が、後ろに流されているのに気が付いた。数分後宇宙港は後方に小さく見えるだけとなった。はるか前方には、なおあの巨大な太陽な真紅の太陽があり、スペースポッドは見違えようもなく、それに向かって降下をはじめていた。


地 獄
今では赤い太陽が空を隅々まで覆いつくしていた。上昇するガス下降するガスが渦を巻き、プロミネンス(紅火)天空に向かってゆっくりとふきあがっている動きが目に見えるのだ、時速百マイルくらいで、立ち上っているのに違いない。自分が進んでいく地獄のスケールをつかんでみたいとは思わなかった。ディスカバリー号が土星面と木星面を通過したとき、その世界の巨大さをいうあと言うほど思い知らされた。だがここでみる者は、その百倍も大きいのだ。眼下の火の海が大きくなれば、恐怖をおぼえるはずだった、だが妙なことに穏やかな不安しか感じなかった。自分がほとんどの全能の知性の保護のもとにあるのに、ちがいないことを論理で類推したからだ。これほど太陽に近づいたいま、なにかに保護されていないかぎり、瞬時に燃え尽きていりはずなのだ。スペースポッドは太陽面にほとんど平行なゆるやかな弧を描いて飛んでいたが、やがてゆっくり降下し始めた。その時はじめてボーマンは、音に気がついた。かすかな絶えまない咆哮、それがときおり紙を引き裂くような、あるいは、遠い雷鳴のような、バリバリという音で破られる。星のエネルギーは、まるでそれが別の宇宙に存在しているのかのように、彼を無視して暴れ狂っている。ポッドはその真っ直中を静かに進んでいるのだった。


歓 侍
今では赤い太陽が空を隅々まで覆いつくしていた。上昇するガス下降するガスが渦を巻き、プロミネンス(紅火)天空に向かってゆっくりとふきあがっている動きが目に見えるのだ、時速百マイルくらいで、立ち上っているのに違いない。自分が進んでいく地獄のスケールをつかんでみたいとは思わなかった。ディスカバリー号が土星面と木星面を通過したとき、その世界の巨大さをいうあと言うほど思い知らされた。だがここでみる者は、その百倍も大きいのだ。眼下の火の海が大きくなれば、恐怖をおぼえるはずだった、だが妙なことに穏やかな不安しか感じなかった。自分がほとんどの全能の知性の保護のもとにあるのに、ちがいないことを論理で類推したからだ。これほど太陽に近づいたいま、なにかに保護されていないかぎり、瞬時に燃え尽きていりはずなのだ。スペースポッドは太陽面にほとんど平行なゆるやかな弧を描いて飛んでいたが、やがてゆっくり降下し始めた。その時はじめてボーマンは、音に気がついた。かすかな絶えまない咆哮、それがときおり紙を引き裂くような、あるいは、遠い雷鳴のような、バリバリという音で破られる。星のエネルギーは、まるでそれが別の宇宙に存在しているのかのように、彼を無視して暴れ狂っている。ポッドはその真っ直中を静かに進んでいるのだった。
デイビットボーマンは自分のために用意されているものを待ちうけた。眼下の地獄に偽りの夕闇が下りた、照明が変わった瞬間、周囲になにかが起こっているのに気がついた。流れる水をすかしてみているように赤色巨星の世界が揺らめいた。きわめて激しい衝撃はは通過したのかもしれない。スペースポッドは静まり返えった夜の中にうかんだ。一瞬の後、ほとんど感じられないほどの衝撃があり、ポッドは何かかたい表面に着陸し、停止した。「着陸?・・いったい何の上に・・?」ボーマンは信じられぬ気持ちで自問じとうした。やがて、光が戻った、不信感は、たちまち失意と絶望にとってかわった。なぜなら、周囲にあるものを見て自分の気が狂ったことがわかったからだ。地球の大都市なら何処にあってもおかしくない上級ホテル・ルームに着陸していた。目の前にはリビングルームがあり、コーヒー・テーブル・寝椅子など、さまざまなものがある。たとえ発狂しているにしても、幻想はみごとに構成されていた。すべてが現実そのものだった。この部屋はアメリカ合衆国の何処にでもあるホテルの部屋に似ている。だがそうだとしても、現実のここが、太陽系から何百光年も離れた場所であることにはかわりないのだ。彼はヘルメットの内部を機密した、そしてポッドのハッチハッチを作動させた。彼は部屋の床を踏んだ、完全なノーマルな重力だ。彼はホテルのルームへむかった、近づくにつれきえてしまうのではないかと思っていたが、それは現実のまま実態をもっていた。彼は電話番号帳をとりあげた、それには見慣れた活字のワシントンDCと印刷されていた。注意深く眺めてみると読める文字は、ワシントンCDという文字だけだった、ほかはぼやけて読めない、他のページは空白だで、紙によく似てはいるがあきらかに紙ではなかった。電話機を持ち上げダイアル音を聞いてみた、予想したとおおり何にも聞こえてこなかった。本や雑誌も同じで、三年前より新しいものは無く、知的な内容のものは皆無だった。好奇心ばかりではなく、空腹感にかられて、ボーマンはさがしはじめた。冷蔵庫を開けた、冷たい霧がふわりと吹きつけてきた。棚は缶詰でいっぱいだった、近くで見ると文字のラベルはぼやけていて読めない、バター肉の未加工品がまったくない。オートミールを開けてみた中には、湿り気をおびた青い物質が入っていた、奇妙な色をのぞけば、食欲をそそった。彼はベットルームに戻ると、ヘルメットと宇宙服をとると、急いでキッチンに戻り、例のオートミールを切れ割って慎重に臭いを嗅ぎ、二切れか三切れかみとると、よく噛みしめてのみこんだ。素晴らしい味だが、風味はどういっていいのかわからない。予期しない副作用でもでないかぎり、死の心配はこれでなくなった。すっかり満足したところで、飲み物をさがした、ビール見つけた、金具を押し開けた、ポンと開いた、ボーマン驚きと失望を感じた、これにもまた青い食品がつまっていたのだ。ほかの箱や缶を開けてみたが、ラベルが違っても内容は同じだ、食事はすこしばかり単調なものになりそうだ。元気を回復したところで手早くシャワーを浴びた、肌着、ガウンを身につけ、ベッドに身を投げ出し天井を見上げると、天井TVスクリーンがあった。電話や本と同じように、それも見かけではないかと、はじめは思っていた。めくらめっぽうにチャンネル・セレクターを回すと、アフリカのニュース、西部劇、フットボールの試合、東洋のパネルゲーム番組、ロシア語の番組、受信機調整用のマークなどを見た、それは世界のTV番組を片っ端から集めたもので、どの番組もTMA1が見つかった時期の、二年前の番組だった。今のところ知りたいことはすべて知ったので、TVを消した。これから何をしよう、彼は肉体的にも精神的にも疲れきっていた。こんな途方もない状況の中ででは、とても眠れそうもなかった。しかし気持ちのよいベッドと肉体にそなわった本能的な知恵が共謀し、彼の意志に逆らってはたらいた。明かりを消す、数秒もしない間に、彼は夢さえも届かない深い淵に沈んでいった。それがデビットボーマンの最後の眠りだった。

再 現
デイビット・ボーマンは、眠りの中で落ち着かなげに身じろぎした。何かが彼のなかに入りこんできた、彼はぼんやりとそれを感じただけだった。彼は宙に浮かんでいるようだった。小さな光の結節が、あるものはのろのろと、あるものは目もくらむ速さで動いていた。その光景あるいはまぼろしは、ひととき続いただけだった。やがて幾層も重なった透明な平面や椅子が行きかう結節は消え、ボーマンは人間がいまだかつて経験したことのない意識の領域に踏み込んだ、はじめは、時間が逆行しているように思えた。やがて彼はその奥に隠されている真相に気がついた。記憶の源泉が開け放たれていくのだ。彼は再び過去を生きはじめていた。赤い太陽の灼熱する表面、そして正常な宇宙に再突入したときに診た黒い出口、視覚ばかりではない、そのときの感覚、感情のすべてが速度を増しながらつぎつぎと通り過ぎていく。テープレコーダーのように、彼の人生が巻きほぐれていくのだ。かつて自分が愛した人々、もうすっかり思い出せなくなっていた人びとが、再びほほえみかけた。やがて逆行の速度がおとろえはじめた。停滞のちきが近づいていた、揺れる振り子が、次の位置に移る直前運動方向をかえた、地球から二万光年隔だった、二重星の真っ直中の、空っぽの部屋に赤ん坊が目を開き、うぶ声をあげた。

変 貌
中空に、かすかに光る長方形がうっすらと現れた。それは透明な石板となって固まると、透明さを失い、淡いミルク色の令光で満たされた。それらは光と影との縞となって凝集し、つぎに交叉する輻のような模様をつくるとゆっくりと回転しはじめた。リズミカルな振動音と調子を合わせていた。子どもなら、ヒト猿なら、必ず注意をひきつけられ、われを忘れてしまう見世物だった。しかし三百万年も前もそうであったように、それは人間の知覚では感じることのできない高度な表現のあらわれにすぎなかった。じっさいのデーター処理が意識のはるかな奥底でおこなわれているあいだ、たんに注意をわきに逸らせておくだけのものだった。今度の場合、長い年月のあいだに、デザイナーは多くを学んでいた。またかれた手を加えようとしている生地も、昔とは比べ物にならぬほどに優れた繊維で作られていた。しかし、はてしなく模様を広げる彼のつづれ織りの一部に、それを加えてよいものかどうかは、未来だけが決めてくれることだった。すでに人間を越えた集中力をその眼差しにみせて、赤ん坊はモノリスの深みをのぞきこみ、横たわる謎を、理解するまでにはいたらないが、眺めた。赤ん坊は自分が生まれた故郷に帰ったことを知った。このモノリスから、人間を含む多くのの種族が誕生したのだ。しかし、同時に、いつまででもここにいられないことを知った。この瞬間が過ぎれば、もう一つの誕生がある。その瞬間がやってきた。置き忘れられたスペースポッドの金属とプラスチックが、またかつてデイビッド・ボーマンとみずから名乗っていた生物の衣装が、炎と化した。それらを構成していた個々の原子へと戻った。あたらしい環境に順応することに余念のなかった赤ん坊はそんなことには気がつかなかった。自分の力を集中させるために、この物質の力が必要だった。これほどの力を持ったいまでも自分は赤ん坊にしかすぎないことを彼は知っていた。あたらしい形態をとる決心がつくまでは、あるいは物質に頼る必要がなくなるまでは、この姿でいるつもりだった。そして出発の時が来た。旅の方向はハッキリしていた。行きがけに通ってきた道をたどる必要はなかった。三百万年を経た本能の助けをかりて、彼は空間の裏側にあるいくつもの道を感じとった星の門(スターゲート)の旧式なメカニズムは彼には必要なかった。以前には透明の石板としか見えなかった長方体は、まだほのかに光ながら目の前に浮かんでいた。それはまだ測り知れぬ時空の秘密を秘めていたが、そのうちのいくらかは、彼にも理解できるようになっていた。各辺の比率をあらわす一対、四対、九の数列が三次元であるばかりと思っていた愚かさ!彼はその単純な図形に神経を集中した。思考がそこに触れた瞬間、図形の内部に宇宙の闇が広がった。ブロックの内部に刻み込まれた、信じられぬほど精巧な模型。そんな風にも見える。だがそれは、資格よりはるかに高度な感覚がつかんだ本物の銀河系の姿なのだ。望みさえすれば、一千億年の星のどれにでも注意を集中できる。いや、それ以上のことが可能だった。そして彼がめざしているのは、そこ、新淵を隔てたむこう側、そこでは、まだ「時」ははじまっていない。いま燃えている星ぼしが死んだ遥か後に、光と生命が新しい銀河を形つくっていくのだ。彼はその空虚をわたってきた。今度は自らの意志で再びわたらなければならない・その考えは、突然凍りつくような恐怖に彼をおとしいれた。それは深淵にたいする恐怖ではなかった、未来に対する底深い不安だった。人間的な時間尺度を、彼は捨て去っている。渦状肢の星のない闇を思い浮かべるうちに彼の前にぽっかり口をあけている「永遠」にはじめて気がついたのだ。だがひとりぽっちではない、どうしても必要なときは、手が差し伸べられるだろう。ふたたび自信を得ると、彼は勇気をとり戻したスカイダイバーさながら、何光年の彼方に一気に跳躍した。星ぼしが無限の速さで後方に流れ去っていった。数知れぬまぼろしの太陽が爆発しては後ろで小さくなっていく。やがて彼は、自分の望んでいた場所、人間にとって実感のある宇宙に戻った。


星の子(スターチャイルド)
目の前には、星の子なら手を出さずにいられない、きらめく玩具、地球が、人をいっぱい乗せて浮かんでいた。手遅れにならないうちに戻ったのだ。下の混み合った世界では、今ごろレーダースクリーン上に物体像が閃き大追跡望遠鏡が空をさがしているにちがいない、そして人々が考えている歴史も終わりをつげるのだ。一千マイル下方の動きに、彼は気がついた。まどろんでいた死の積荷が目をさまし、軌道上でもそろそろ身じろぎしている。そんな弱よわしいエネルギーなど少しもこわくはないが、彼はきれいな空のほうが好きだった。意志を送り出すと、空を行くメガトン爆弾に音がなく、閃光の花が咲いていた。眠っている地球の半球に、短い、いつわりの朝が訪れた。それから彼は考えを整理し、まだ試していない自分の力について黙想しながら待った。世界はむろん意のままだが、次になにをすればよいのか、わからないのだった。だが、そのうち思いつくだろう。

倉田わたるの「2001年宇宙の旅」の真相
2001/08/06・記 2016/08/01・Renewal